米国のコールセンター事情:オフショアからの撤退?

結論|米国の動きから日本の管理者が学ぶべき3つのポイント
現在、米国ではコールセンターのオフショア依存を見直し、顧客体験(CX)とセキュリティを重視する規制案が議論されています。
この動き自体が日本で直ちに制度変更を引き起こすものではありません。
しかし、「コールセンターをどう評価し、どう外注するか」という判断軸において、日本の管理者にとっても見過ごせない示唆を含んでいます。
日本の管理者が押さえるべきポイントは、次の3点です。
- コスト最優先の外注モデルは、品質・リスク両面で限界を迎えつつある
- CX(顧客体験)を軸にしたBPO活用が、競争力を左右する時代に入っている
- BPOは「席単価」ではなく、「品質と伴走力」で選ぶべきパートナーになっている
なぜ米国で「オフショア一辺倒」が見直され始めたのか
コールセンターのオフショア化(海外委託)は、これまで多くの企業にとってコスト削減と人材確保を両立する有効な手段でした。
特に米国では、英語対応が可能で人材供給も豊富な国々が、長年主要な委託先でした。
しかし近年、米国の消費者からコールセンターに対して、
- 言葉は通じるが、細かなニュアンスが伝わらない
- 何度説明しても話が噛み合わず、ストレスが溜まる
といったサポート品質への不満が顕在化しています。
こうした背景のもと、米国の規制当局が動き始めました。
FCC(米国連邦通信委員会)による規制提案の概要
そもそもFCCとは何か
FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)は、米国における州間・国際通信を規制する独立した連邦機関2です。
そして、放送、電話、インターネット、衛星通信等に関するルール策定や監督権限を持っています。
今回、消費者の不満解消とセキュリティ強化を目的に、コールセンターのオンショアリング(国内回帰)を促進する規制案を提示しました。
検討されている主な規制内容(案)
現在、FCCが検討している規制案の骨子は、以下の2点に集約されます。
1. オフショア対応割合の制限
まずFCCは、顧客サポートの品質維持のため、海外に外部委託するコール量を大幅に抑制することを提案しています。
現時点で議論されている案では、海外委託の割合を全体の30%程度に抑え、残りを米国内対応とする方向性が示されています。
これにより、企業は米国内での雇用を増やさざるを得ない状況になります。
2. 「標準的なアメリカ英語」能力の要件化
次に、英語能力の要件化です。
ここでは、単なる日常会話レベルではなく、標準的な「アメリカ英語」を求めています。
- 米国特有の言い回し
- 文化的背景やニュアンス
- 顧客感情を汲み取る表現力
コミュニケーターに対し、これらの習熟を求める方向性が示されています。
規制案で想定される4つの主な義務
仮に本規制案が導入された場合、通信事業者やBPOベンダーに、このような義務が課される可能性があります。
その場合、品質とリスク管理を重視する姿勢がより重要になってくるでしょう。
世界のBPO市場への影響と、日本市場への間接的な波及
影響が大きいと予想される国・地域

最も影響を受けると見られているのは、米国向けオフショアの主要拠点であるフィリピンやインドです。
これらの国々で事業を展開するBPOベンダーは、米国依存からの脱却や、サービスの高付加価値化を迫られることになります。
日本市場への直接的影響は限定的
| カテゴリ | 直接的な影響 | 間接的な影響(重大) |
|---|---|---|
| 市場の動き | 限定的(日本語の壁があるため) | グローバルBPO事業者の戦略変更 |
| 品質基準 | 海外連携の厳格化 | CX(顧客体験)の再定義と投資増 |
| 採用・雇用 | 変化なし | 「国内・地方拠点」の価値再評価 |
| IT・セキュリティ | データ保護基準の向上 | BPO選定基準の「安全性」へのシフト |
日本語対応という言語特性があるため、制度としての直接的な影響は限定的と考えられます。
しかし、次のような間接的な波及には注意が必要です。
- グローバルBPO事業者の日本市場シフト
米国のBPO市場(コールセンター)の縮小を補うため、日本市場への参入や提携を強化する動きが加速する可能性。 - 「コストよりCX」という国際基準の浸透
安さを最優先した外注はリスクを伴う、という認識が、日本企業の経営層にも広がっていく。
日本のカスタマーサポート業界が今、考えるべき戦略
米国の規制議論は、カスタマーサポートの価値が「コストセンター」から「CXを生み出す重要な顧客接点」へと変化していることを示しています。
そして、日本のコンタクトセンター管理者が取り組むべき視点は、次の3点です。
① KPIを「コスト」から「CX」へシフトする
席単価や処理件数だけでなく、
- 顧客満足度(CS)
- 再問い合わせ率
- 応対品質のばらつき
といった体験価値を測る指標を重視したKPI設計が求められます。
② BPOを「戦略的パートナー」として活用する
BPOを単なる外注先ではなく、
自社の顧客体験を共に設計・改善するパートナーとして位置づける視点が重要です。
教育体制、品質管理、セキュリティ、業務理解力――
これらを総合的に評価し、長期的に伴走できる関係構築が、結果として競争力につながります。
③ 国内・地方拠点の価値を再評価する
国内でのデータ管理と安定した日本語対応を両立できる地方拠点型BPOモデルは、
品質・セキュリティ・雇用創出の観点からも、今後さらに価値を高めていくと考えられます。
まとめ|「安さ」から「信頼と体験」へ
米国FCCによるコールセンターのオフショア規制の議論は、
カスタマーサポートの本質が「コスト最適化」から「CX価値の最大化」へ移行していることを象徴しています。
変化の激しい時代だからこそ、目先のコストにとらわれず、
- 顧客体験の質
- セキュリティとリスク管理
- 信頼できるパートナー選び
を重視した意思決定が、企業のブランド価値を左右します。
日本のカスタマーサポート業界においても、
この潮流を「他国の話」で終わらせず、自社の戦略を見直す契機として捉えることが重要です。

- FCC内の公式ドキュメント(英語サイト) ⇒ FCC Proposes Call Center Onshoring, English Proficiency Requirements | Federal Communications Commission ↩︎
- FCC公式サイト(英語サイト) ⇒ https://www.fcc.gov/ ↩︎
