CAC(顧客獲得コスト)とユニットエコノミクス
今回は、事業収益の健全性を測る事が出来る指標を紹介し、
最終的に「既存顧客は大切」と繋がるお話です。
紹介する指標
LTV | 1顧客に対して、将来にわたって期待できる利益 |
CAC | 1顧客を獲得するために必要なコスト |
ユニットエコノミクス | ユニットエコノミクス:単位当たりの経済性 |
◎LTVに関しては別記事で紹介しているため、そちらをご参照ください。
CAC(顧客獲得コスト)
CACは、Customer Acquisition Costの略です。日本語に訳すと「顧客獲得コスト」となり、1顧客を獲得する迄に必要なコストを指します。
シンプルに下記のような式で得られます。
$$CAC=\dfrac{顧客獲得にかかる総コスト}{獲得顧客数}$$
顧客獲得にかかる総コストは、販売・マーケティングにかかる費用や担当者の賃金、使用するソフトウェア費用等、顧客獲得に必要な全ての経費を足したものが推奨されます。
これをLTVと比べる事で事業収益の健全性を測ることが出来ます。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは、CAC(顧客獲得コスト)に対するLTV(顧客生涯価値)のバランスから、顧客当たりの採算性を測るもので、下記の式で表せます。
$$ユニットエコノミクス=\dfrac{LTV}{CAC}$$
また特にユニットエコノミクスがよく用いられるSaaS業界では、下記の状態が適正と言われています。
- ユニットエコノミクス = 3
- 年間利益 > CAC
《和訳》
- 顧客獲得コストに対して、3倍の利益を得られる。
- 顧客獲得コストを1年間で回収できる。
コスト・利益に関して正確な数字が得られれば、実際①は3倍迄いかなくても良いかもしれません。
ただし事業展開においては、様々な見えにくいコストが存在するため、CACにはズレが生じがちです。
全ての事業が利益を生むとも限りませんし、運用益を得ながら事業を拡大していくには、ユニットエコノミクスの適正値は3と考えられます。
ちなみに、ユニットエコノミクスは大きければ大きいほど良いわけではありません。
仮に3を超えている場合、CACを増やせば、より多くの顧客獲得が期待出来るのに、それをしていない状態と言えます。
本来期待できるビジネス機会を失しないためにも、CACを測り調整する事は重要でしょう。
もう1点の②顧客獲得コストを1年間で回収に関しては、長期利用いただける見込の場合、もっと時間をかけても良いように感じるかもしれません。
しかし、経費の回収に時間がかかると言うのは、それだけリスクを負う事になります。特に変化の早い現代のビジネスシーンにおいて、顧客獲得コストの回収は1年以内が望ましいでしょう。
※銀行の貸付においても、1年以内は短期貸付金、1年を超える場合は長期貸付金となり、扱いも異なってきます。
銀行の貸付もそうなんだ?
偶然かもしれないけどね。
でも基準としては大外れではないかも?
1:5の法則
CACに関連する話でもう一つ、1:5の法則というマーケティング界隈で有名な説があります。
これは、新規顧客に販売するためのコストは、既存顧客のそれよりも5倍必要になるという法則です。
フレデリック・F・ライヒヘルド氏が発見しました。
冒頭で述べた「既存顧客は大切」という話がこれです。
素晴らしいサービスを開発し、金額を適正化した上で顧客へ提供開始したとしても、理想の販売コストで計画した売上を実現するのはとても難しいです。
多くのライバル企業よりも、会社・サービスの知名度を上げるために宣伝活動で露出を増やし、販売を促進する。その都度宣伝費・人件費をはじめとした多くの顧客獲得コストが発生します。
これらを一気に省略できるのが「既存顧客」です。
新たなサービス提供対象である見込み顧客として見た場合、既存顧客は下記のような状態です。
- 自社の事を既に認知している。
- 既に一定の信頼を得ている。
- (BtoBのお客様目線)新しい取引先を増やさずに利用可能。
取引の初期段階における必要コストを大きく省略可能であるため、既存顧客は非常に優良な見込み顧客とも言えるでしょう。
まとめ
今回は下記の内容をご紹介しました。
- 顧客獲得コストCAC
- ユニットエコノミクスの適正値は3、CACは1年で回収
- 1:5の法則 = 既存顧客は大切
用語の紹介が多くなり恐縮ですが、一番大切なのは最後の点だと思っています。
現在サービスをご利用いただいている既存のお客様は、新しいサービスの優良な見込顧客ともなります。
それを実現するためには、現状のサービスでより高い満足度を提供する事が大切だと考えられます。